二つ目のデータはスピン量です。これには2つの種類があります。バックスピンとサイドスピンです。ドップラーレーダー式のトラックマンでも、カメラ式のスカイトラックやGC2でも同じ項目として存在します。バックスピンはボールの進行方向と平行な向きのスピン量のことで、サイドスピンはそれに直行する向きのスピン量のことです。
実際のゴルフボールは斜めに傾いて回転しているため、成分として分けて集めた回転数を弾道計測器が表示します。中には回転軸を表示する計測器もありますが、概念としてはバックスピンとサイドスピンで分けた方が分かりやすいのでこの記事ではその二つを説明します。
サイドスピンは難しくありません。方向を決めるスピンのことです。横向きに回転する量が多ければ多いだけ曲がり幅が大きくなるので方向性が悪くなるだけでなく、運動量が増えるので実は飛距離も落ちます。もっと言えば、OBは0yですから、あまりにも多いのはタブーです。
バックスピン量というデータを大局的に見ると、あくまで抵抗であるという考え方が重要だと私は考えています。スピードが絶対的な指標なので、それを邪魔するようではいけないということです。どういうことか、エネルギーの概念を使って説明します。
運動する物体=ボールについて考えると、エネルギーの最大値はボールがフェースから離れた瞬間です。そこからだんだん減っていき、ボールが転がり終わって静止した時にエネルギーは0になります。ボールがフェースから離れた瞬間のエネルギー(ここでは速度による運動エネルギーのみにします)と、重力による下向きの力(質量による)+飛んでいる最中に受ける空気抵抗+スピンによる運動エネルギー+着地した瞬間の地面との摩擦+転がっている時の芝との摩擦が同じ量ということです。
ボールがフェースから離れた瞬間の運動エネルギー
=重力による下向きの力+飛んでいる最中に受ける空気抵抗+スピンによる運動エネルギー+着地した瞬間の地面との摩擦+転がっている時の芝との摩擦
ただし、スピン量の難しいところはゼロではダメだという点です。この式を見る限り「スピンは抵抗なのでなければ良い」と思われるかもしれませんがそうではありません。それはスピンに揚力をもたらす力があるからです。
簡単に言うと、鳥が滑空するようなイメージです。羽の角度を利用して揚力を発生させてはばたかずに飛び続けています。羽の後ろには気流が発生しそれが体を浮かせているのです。
スピンが無い、少ないというのは鳥がはばたかずに、落下する方向と羽との角度を持たずに落ちていくのと同じです。一直線に地面に落ちていきます。ゴルフクラブを選ぶ時に重要なのは今のクラブと比べて飛ぶかどうか、距離は同じでもより安定しているかどうか、でしょうからスピンがあまりに少ないとすぐに落下してしまうのでデメリットになり得るということです。
バックスピンは確かに運動エネルギーを減らす抵抗ではありますが、重力に反対する揚力を発生させる抵抗にもなるので、ある程度バックスピンがあることで滞空時間が伸びキャリーの飛距離が増大するということです。
少し難しい話になってきましたので一言にまとめると“スピンは少ない方が良いけど少なすぎるとキャリーが伸びない”ということです。クラブ選びではこの”少ない”のギリギリを狙うのがポイントになってきます。