弾道データの見方①ボールスピード

ゴルフの弾道データにおいて、重要なデータが3つあります。ボールスピード、スピン量、角度です。

ゴルフのデータの中で、絶対的な指標はボールスピードだけです。ほかのスピン量と角度に関しては組み合わせによって結果が変わるため、相対的な指標ということになります。

ボールスピードとは何か。他の言い方をすると「初速」というものです。クラブのヘッドに当たった直後のボールの速さのことです。これは他の条件が同じであれば、速ければ速いだけ飛ぶという単純な指標です。絶対的な指標のためあまり説明は必要ないでしょう。

弾道データの見方②スピン量

二つ目のデータはスピン量です。これには2つの種類があります。バックスピンサイドスピンです。ドップラーレーダー式のトラックマンでも、カメラ式のスカイトラックやGC2でも同じ項目として存在します。バックスピンはボールの進行方向と平行な向きのスピン量のことで、サイドスピンはそれに直行する向きのスピン量のことです。

実際のゴルフボールは斜めに傾いて回転しているため、成分として分けて集めた回転数を弾道計測器が表示します。中には回転軸を表示する計測器もありますが、概念としてはバックスピンとサイドスピンで分けた方が分かりやすいのでこの記事ではその二つを説明します。

サイドスピンは難しくありません。方向を決めるスピンのことです。横向きに回転する量が多ければ多いだけ曲がり幅が大きくなるので方向性が悪くなるだけでなく、運動量が増えるので実は飛距離も落ちます。もっと言えば、OBは0yですから、あまりにも多いのはタブーです。

バックスピン量というデータを大局的に見ると、あくまで抵抗であるという考え方が重要だと私は考えています。スピードが絶対的な指標なので、それを邪魔するようではいけないということです。どういうことか、エネルギーの概念を使って説明します。

運動する物体=ボールについて考えると、エネルギーの最大値はボールがフェースから離れた瞬間です。そこからだんだん減っていき、ボールが転がり終わって静止した時にエネルギーは0になります。ボールがフェースから離れた瞬間のエネルギー(ここでは速度による運動エネルギーのみにします)と、重力による下向きの力(質量による)+飛んでいる最中に受ける空気抵抗+スピンによる運動エネルギー+着地した瞬間の地面との摩擦+転がっている時の芝との摩擦が同じ量ということです。

ボールがフェースから離れた瞬間の運動エネルギー

=重力による下向きの力+飛んでいる最中に受ける空気抵抗+スピンによる運動エネルギー+着地した瞬間の地面との摩擦+転がっている時の芝との摩擦

ただし、スピン量の難しいところはゼロではダメだという点です。この式を見る限り「スピンは抵抗なのでなければ良い」と思われるかもしれませんがそうではありません。それはスピンに揚力をもたらす力があるからです。

簡単に言うと、鳥が滑空するようなイメージです。羽の角度を利用して揚力を発生させてはばたかずに飛び続けています。羽の後ろには気流が発生しそれが体を浮かせているのです。

スピンが無い、少ないというのは鳥がはばたかずに、落下する方向と羽との角度を持たずに落ちていくのと同じです。一直線に地面に落ちていきます。ゴルフクラブを選ぶ時に重要なのは今のクラブと比べて飛ぶかどうか、距離は同じでもより安定しているかどうか、でしょうからスピンがあまりに少ないとすぐに落下してしまうのでデメリットになり得るということです。

バックスピンは確かに運動エネルギーを減らす抵抗ではありますが、重力に反対する揚力を発生させる抵抗にもなるので、ある程度バックスピンがあることで滞空時間が伸びキャリーの飛距離が増大するということです。

少し難しい話になってきましたので一言にまとめると“スピンは少ない方が良いけど少なすぎるとキャリーが伸びない”ということです。クラブ選びではこの”少ない”のギリギリを狙うのがポイントになってきます。

弾道データの見方③角度

三つ目のデータが角度です。様々なショップ店員のフィッティングやメーカーフィッティングを経験した私にとって、この角度を軽んじている人が多いように感じます。

3つのデータの中で重要度で言えばボールスピードが最重要でありますが、スピン量と角度は同じだけ重要です。その理由はこの後説明していきます。

さて、角度は二種類あります。打ち上げ角打ち出し角です。

※打ち上げ角:弾道を横から見た時に地面とボールがなす角

※打ち出し角:弾道を真上から見た時に飛ばしたい方向とボールがなす角

このように考えると、打ち上げ角は滞空時間に影響し、打ち出し角は方向性に影響するというのが分かると思います。打ち出し角は右打ちの場合、フェースがスクエアでインサイドアウト軌道だとクラブの軌道角以下の右打ち出しになります。フェースが開けば打ち出し角が右になるわけではないので注意してください。フェースの開閉に関しては、また後で説明します。

打ち上げ角は、ボールがどのくらいの角度で上がっていくかです。最初にちょろっと書いたのですが、速度は速さと角度で構成されています(=ベクトル量)。つまりボールスピードにも影響するデータだということです。

極端な話をしましょう。仮に30度という大きな角度で打ち出したとすると、飛ばしたい方向に対しての速度成分は全体の速度成分の14%減になります(cos30°≒0.86をかけるためです)。その減った14%はボールが重力に反して上がっていくのに使われます。角度が大きいだけで、前向きのボールスピードは落ちるということです。ですから、あまりに打ち上げ角度が大きいと、そもそもボールスピードが落ちるので良くないということになりますね。

ではどのくらいが適切な角度になるのかということですが、これは一概には言えません。特に、クラブメーカーが何度の打ち上げ角度と何回転のスピン量の組み合わせが最適解としているかを公表しないからです。まぁそれだけ重要という意味でもありますが。

角度とスピン量のバランスは、ボールスピードによるところが大きいと私は考えています。私の基準、ヘッドスピード50m/s、ボールスピード72m/sであれば、打ち上げ角度15°~18°、バックスピン量2400rpm~1700rpmが黄金比だと暫定的に結論付けています。15°×2400rpm~18°×1700rpmのこの範囲に収めれば距離のロスは少ないということです。角度が増えてもスピンが減れば良く、スピンが増えても角度が減れば良いということです。

弾道データの見方④実際のデータを分析して伸びしろを探る

本的な考え方は既にお伝えしました。次のステップとして、自分の弾道データに当てはめた時に見るべきチェックポイントをまとめておきます。前提条件は、複数の種類のドライバーの比較、計測器はトラックマンとGC2とします。

・キャリーの飛距離とボールスピード

最重要です。正直、弾道計測器で測って最も飛ぶクラブを選べば外れはしません。ですから、キャリーの飛距離をまず比較します。そこから、いわば”あら探し”をしていくのです。

ボールスピードは製品の設計の段階で目標反発係数が設定されていますので、それに応じてある程度決まっていました。最近のドライバーはいかに製品誤差を少なく作るかというのも一つポイントになっているので、差は出来にくくなっています。製品精度が高い=高い反発係数を目標に製造可能ということです。

ボール初速が速いドライバーを最優先で選択しましょう。

・スピン量

あまりに少なくないかに気を付けます。弾道計測器によって物理エンジンが違いますが、スピン量があまりにも少ないと初速が異様に上がる計測器(とボールとの組み合わせ)があるので注意してみます。このとき、ヘッドスピード40~48m/sであれば2000~3000rpmの中に納まっていれば特に問題無しです。40以下であれば2500rpm~3300rpm、48以上では1700rpm~2400rpmといった感じです。もし、室内の計測でこの基準値を外れて飛んでいるクラブが合った場合は、そのクラブをレンタルして、コースで比較して最終的な判断とします。ドライバーは打つ環境が一定で比較的試打通りになりやすいですから、不安な場合はこのような策も検討しておいてください。

・角度

ここで見るのは、先に述べた打ち上げ角と打ち出し角に加えて落下角度です。打ち出し角は、ドローヒッター(サイドスピンが左回転)の人は0.5°~3°の右打ち出し、フェードヒッターは5°~0°の左打ち出しです。フェードヒッターの場合、クラブの軌道的にバックスピンが増えやすいため、打ち出し角を左にすることで打ち上げ角も低くすると飛距離が伸びやすくなります。

仮に、同じくらい(誤差5y以内)の平均キャリーが出た場合は、落下角度に注目します。ヘッドスピードが50m/sを超える人だと、落下角度は40°を超え、ランが出にくくなる人が現れてきます。そうなった場合、同じくらいの平均キャリーなら落下角度の小さい方を選択しましょう。

フェースの開閉とは

ゴルフショップでお客さんの話を聞いていると、スライサーほど左に打ち出そうとしてアウトサイドイン軌道が大きくなりサイドスピンが増えて、さらにスライスするように打ってしまう人が多かったです。これは、フェースの開閉に対する認識が誤っているから起こる問題だと私は考えています。

では、フェースの開閉とは何か。それは、クラブ軌道(クラブパス)に対してフェースがどれだけ開いているか、閉じているかです。これはクラブを扱う人間としては常識で、スイング解析をする際もこの考え方を用いることが多いように感じます。勘違いしている人は、スクエアに対してフェースがどのくらい開いているか、閉じているかで考えています。

例えば、トラックマンの数値でクラブパス(-)4.4度 フェ-ストゥパス(+)2.7度 これは、アウトサイドイン軌道の角度が4.4°ということです。この軌道に対して、フェースは2.7°開いているという状態です。つまり、私たちクラブを扱うものとしてはこれは「フェースが開いている状態」ということになります。

一方で、フェースアングル、これがスクエアに対するフェースの開き具合です。これが(-)1.7の場合、マイナスの数字は左向き=閉じているということなので、スクエアに対して1.7°閉じているということになります。ただし、これでは認識が間違っています。この認識の違いが意識と実際をさらに乖離させる原因でもあります。

みなさんの意識とは逆向きにスピンがかかっているということが多い印象です。これは、ダウンブローとダフリの関係においてもおきます。これを知っているか知っていないかで、練習場でミスが出始めた時の対処法も正しくなるのでぜひとも覚えて頂きたい概念です。

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