では早速、本題に入っていきましょう。先に述べた通り、セッティングのスタートはヘッドにあります。ここでどんなヘッドを選ぶかで飛ばしやすさが変わったり、文字通り飛距離が変わります。
ヘッド選びで気を付けることは以下の3点です。
・バックスピン量
・方向性
・フェースアングル
【バックスピン】
特に300yを目指しているヘッドスピードの速い人にとって、この項目が最も重要でないかと私は考えています。このバックスピンに影響を与えるのは、重心位置、フェースの反発係数です。簡単に説明すると、スイートエリアよりも上で当たりやすいヘッドが低スピンヘッドです。
スイートエリアの位置は重心位置で決まり、その位置が低ければ、同じ軌道であってもスピンが減るゾーンに当たりやすいヘッドとそうでないヘッドに分かれるということになります。
もう一つの反発係数ですが、これは分かりやすいです。反発係数が高いというのは、ボールがフェースに付着している時間が短いこととほぼ同義です。物と物が接触する時間が短ければ、スイングという軌道中は摩擦が減るためスピンが減ります。同時に、発生するスピン量が少ない=エネルギーロスが少ないため、初速も上がるということにもなりますね。
この二つを満たすヘッドが低スピンになりやすいということになります。反発係数に関しては、最近のドライバーの製造技術の向上によって、プロパー品でも高い水準になってはいますが、実際に計測した数値で知りたい場合は「ツアー支給品」を入手するのが良いでしょう。例えばテーラーメイドのドライバーだと、現行品で10万円強、1つ前で6万前後、2つ前で4万前後で取引されています。反発係数を見ると、2つ前のモデルでも現行でも変わらないので、両者の試打を行ったうえで、より自分が求めるスピン量に近い方を選ぶのが賢明でしょう。ツアー支給品が出回らない場合は、製品の重心位置によるバックスピン量の違いだけを基準にして選びましょう。
具体的なスピン量ですが、300yを目指すなら2000rpm前後。2000rpmを切っても、打ち上げ角度が15°を超えていれば大丈夫です。逆に、2700rpmを超えるヘッドは300yを飛ばせないことはありませんが、楽ではないのでおススメしません。
【方向性】
方向性を良くすることは、飛距離アップにおいては本当に重要なことなのです。より説得力のあることをお話ししましょうか。
「曲がる」の原理は何でしょうか?
フェースが開きすぎるor閉じすぎることによって発生した過剰なサイドスピン、もしくは過剰な打ち出し角度によって生じた軸からのずれですよね。
この、過剰なサイドスピンが飛距離にとってどんなデメリットがあるかというと、エネルギーロスです。スピンは回転による運動エネルギーなので、かかればかかるだけロスが増えます。
過剰な打ち出し角はどうでしょうか。これはあまり考えすらしないかもしれませんね。速度というのは速さという大きさを持つベクトル量です。ベクトルは角度が付けば、欲しい方向への速さの大きさが減ります。ゴルフで言えば、まっすぐ飛ぶ方向への速さ成分が減少する=ボールスピードが落ちることになります。飛距離において絶対的に重要なスピードが失われ、飛距離を落とす要因となってしまいます。
ですから、方向性は飛距離を伸ばす際にも重要になってくるわけです。
【フェースアングル】
一般的にフェースアングルとは、ヘッドがどのくらい開いているか、閉じているかで語られます。
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(画像:ゴルフクラブ数値.comより)
フェースアングルは、ヘッドの方向性に影響します。開いていれば右に打ち出しやすくなり、閉じていれば左に打ちやすくなります。クラブセッティングを考える上でこれをどのように利用するかというと、軌道に対するフェース角度を改善するための微調整です。
弾道データの見方でも言いましたが、クラブ軌道に対してフェースが開いた・閉じた量でサイドスピン量が増減します。つまり、軌道に対して開いているならクローズドフェースを、閉じているならオープンフェースを選択するということです。1°前後のズレなら、フェースアングルは特に気にする必要はありません。
ロフトは、多くのアベレージゴルファーにとってはあまり意味のあるものではありません。1°変えたところで、弾道が激変することなどないのです。それはスイングのズレの方が、1°のロフトよりも大きいからです。しかし、飛距離を1yでも伸ばしたいなら、バックスピン量をみて大胆に変更してみることをおススメします。これは、ロフト調整機能も含めてのことです。9°のヘッドを7°にするなど、1°単位での変更を繰り返しテストし、ベストなデータになるように調整します。ロフト調整機能があることで、製品誤差によるスピンロスを解消できるというのはかなりのメリットだと私は考えています。