"シャフト特性が、ヘッドによって引き出される具合がかなり変わる"というのが結論です。

具体的に数字にしてみましょうか。分かりやすくするためにややオーバーに書いてみます。

ヘッドが重要というのを数字にするとヘッド:シャフト=9:1
シャフトが重要というのを数字にすると、ヘッド:シャフト=1:9

私の考えは、これらのどちらとも異なります。例えばゼクシオとタイトリストTS3を比べてみます。

ゼクシオの場合、かなり味付けの濃いヘッドで、オートマチックな動きを示すドライバーです。そのようなドライバーでは、
ヘッド:シャフト=6:4
一方のTS3は上級者向けのニュートラルなヘッドです。こうしたドライバーヘッドはシャフトの性能を邪魔することが無いので、
ヘッド:シャフト=2:8

この範囲の中で、割合が相互に変化しながら推移するというのが私の考え方です。
正確に言うと、スライサー向けの重心角が大きいドライバーはシャフトでどうこうしてもヘッドが”勝手に返ってしまう”のでヘッドの影響力が勝ちます。一方で、こういう言い方は好きではありませんが、操作性が高いと大手メディアで表現される重心角の小さいドライバー、もしくは重心が浅いドライバーはシャフトの影響をもろに受けるため、ヘッドの影響力が負けるということです。

このことから、私の考えるセッティング方法では、まず最初にヘッドを選ぶというのが基本となります。もちろんこれはまっさらな状態からの話で、いま気に入っているシャフトがある、ヘッドがあるという場合はこれには当てはまりません。

 

300yドライバーを作るヘッド選び

では早速、本題に入っていきましょう。先に述べた通り、セッティングのスタートはヘッドにあります。ここでどんなヘッドを選ぶかで飛ばしやすさが変わったり、文字通り飛距離が変わります。
ヘッド選びで気を付けることは以下の3点です。

・バックスピン量
・方向性
・フェースアングル

【バックスピン】

特に300yを目指しているヘッドスピードの速い人にとって、この項目が最も重要でないかと私は考えています。このバックスピンに影響を与えるのは、重心位置、フェースの反発係数です。簡単に説明すると、スイートエリアよりも上で当たりやすいヘッドが低スピンヘッドです。

スイートエリアの位置は重心位置で決まり、その位置が低ければ、同じ軌道であってもスピンが減るゾーンに当たりやすいヘッドとそうでないヘッドに分かれるということになります。

もう一つの反発係数ですが、これは分かりやすいです。反発係数が高いというのは、ボールがフェースに付着している時間が短いこととほぼ同義です。物と物が接触する時間が短ければ、スイングという軌道中は摩擦が減るためスピンが減ります。同時に、発生するスピン量が少ない=エネルギーロスが少ないため、初速も上がるということにもなりますね。

この二つを満たすヘッドが低スピンになりやすいということになります。反発係数に関しては、最近のドライバーの製造技術の向上によって、プロパー品でも高い水準になってはいますが、実際に計測した数値で知りたい場合は「ツアー支給品」を入手するのが良いでしょう。例えばテーラーメイドのドライバーだと、現行品で10万円強、1つ前で6万前後、2つ前で4万前後で取引されています。反発係数を見ると、2つ前のモデルでも現行でも変わらないので、両者の試打を行ったうえで、より自分が求めるスピン量に近い方を選ぶのが賢明でしょう。ツアー支給品が出回らない場合は、製品の重心位置によるバックスピン量の違いだけを基準にして選びましょう。
具体的なスピン量ですが、300yを目指すなら2000rpm前後。2000rpmを切っても、打ち上げ角度が15°を超えていれば大丈夫です。逆に、2700rpmを超えるヘッドは300yを飛ばせないことはありませんが、楽ではないのでおススメしません。

【方向性】

方向性を良くすることは、飛距離アップにおいては本当に重要なことなのです。より説得力のあることをお話ししましょうか。

「曲がる」の原理は何でしょうか?

フェースが開きすぎるor閉じすぎることによって発生した過剰なサイドスピン、もしくは過剰な打ち出し角度によって生じた軸からのずれですよね。

この、過剰なサイドスピンが飛距離にとってどんなデメリットがあるかというと、エネルギーロスです。スピンは回転による運動エネルギーなので、かかればかかるだけロスが増えます。

過剰な打ち出し角はどうでしょうか。これはあまり考えすらしないかもしれませんね。速度というのは速さという大きさを持つベクトル量です。ベクトルは角度が付けば、欲しい方向への速さの大きさが減ります。ゴルフで言えば、まっすぐ飛ぶ方向への速さ成分が減少する=ボールスピードが落ちることになります。飛距離において絶対的に重要なスピードが失われ、飛距離を落とす要因となってしまいます。

ですから、方向性は飛距離を伸ばす際にも重要になってくるわけです。

【フェースアングル】

一般的にフェースアングルとは、ヘッドがどのくらい開いているか、閉じているかで語られます。

(画像:ゴルフクラブ数値.comより)

フェースアングルは、ヘッドの方向性に影響します。開いていれば右に打ち出しやすくなり、閉じていれば左に打ちやすくなります。クラブセッティングを考える上でこれをどのように利用するかというと、軌道に対するフェース角度を改善するための微調整です。

弾道データの見方でも言いましたが、クラブ軌道に対してフェースが開いた・閉じた量でサイドスピン量が増減します。つまり、軌道に対して開いているならクローズドフェースを、閉じているならオープンフェースを選択するということです。1°前後のズレなら、フェースアングルは特に気にする必要はありません。

ロフトは、多くのアベレージゴルファーにとってはあまり意味のあるものではありません。1°変えたところで、弾道が激変することなどないのです。それはスイングのズレの方が、1°のロフトよりも大きいからです。しかし、飛距離を1yでも伸ばしたいなら、バックスピン量をみて大胆に変更してみることをおススメします。これは、ロフト調整機能も含めてのことです。9°のヘッドを7°にするなど、1°単位での変更を繰り返しテストし、ベストなデータになるように調整します。ロフト調整機能があることで、製品誤差によるスピンロスを解消できるというのはかなりのメリットだと私は考えています。

シャフトを選ぶ

シャフト選びには3点の要素があります。
・スピン性能や方向性能
・長さ
・仕上げ方法

【スピン性能や方向性能】

これが一番大事です。あとの二つはこの性能をいかに高い確率で引き出すかに影響すると思ってください。

シャフトの方向性を決めるのは剛性分布と重量分布(重心位置)だと私は考えています。よく言われるキックポイントはほフィーリングに影響しますが方向性と深い関係があるとは言えません。特に元調子は捕まるシャフトも捕まらないシャフトもあるので偏見を持たずにシャフト選びをする必要があります。

では合成分布の特にどこを見れば良いのかをお伝えします。

例えば、これはディアマナS+、M+、D+とテンセイCKプロシリーズの剛性分布です。剛性はグラフの上ほど硬くなります。左がチップ側で、右がバット側です。
まずは、このグラフを三分割してみます。そして、手元側、中間、先端側に分けて考えるのです。よく言う「先端剛性が高い」云々のアレです。3分割にすることで、ある程度シャフトの特性を理解することが出来ます。

これを見ると、テンセイCKプロオレンジは先端剛性が特に高いことが分かります。また、ディアマナD+PLUSは先端だけでなく中間剛性も高いということが分かりますね。

先端剛性が高いシャフトは、以下のような傾向があります。

・バックスピンが減りやすい
・打つ際に、打ち出し角を調整しやすい
・右に飛ぶシャフトが多い

厳密には例外もありますし、打つ人によって結果が変わることも有りますからご自分で打って確認する必要があります。逆に先端剛性が低いと、打ち上げ角が高くなったり、スピンが増えたりします。

手元剛性が高いシャフトは以下のような特徴があります。

・弾道が安定しやすい
・腕力が強い人に合う

手元剛性が高いシャフトはあまり見かけませんが、USモデルには何種類かあります。手で思い切り振り降ろすタイプの人なんかは手元剛性が高い方が安定します。手元剛性が低いと、ややピーキーになりやすく、フェースが返りにくいシャフトも出てきます。

中間剛性ですが、これは、手元剛性と先端剛性の具合に影響されていしまうので一概に分類することは出来ません。ですから、基本的には先端剛性と手元剛性を見てある程度検討を付けておきましょう。

【長さ】

長さは、理論上は長ければ長いだけ有利ですが、コースで曲がり幅40y以内にするには安定性も必要です。

重要なのは、自分に合う長さを見つけることです。短尺が合う人もいれば長尺が会う人もいます。シャフトが短いと、弾道が低くなるので、高弾道でロスをしている人は短尺化も検討してみると良いと思います。最大パワーを出すなら長い方が良いので、安定感に自信がある人は出来るだけ長く仕上げることをおススメします。

【仕上げ方法】

仕上げ方法とは何かというと、チップカットするのかバットカットするのかといったことです。

簡単に言うと、チップカットをするとバランスはそのままで、3スペック分くらい硬くなるという感じです。同じ重量で硬さを増したいならチップカットをするという風に考えてください。この後詳しく書きますが、トータル重量を軽くするためにはチップカットは有効な手段ですから覚えておきましょう。

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