構造は、ヘッド重量がどのメーカー、モデルも同じアイアンにおいて、距離を決める重要な要因です。特に最近では様々な構造を目にするようになりましたし、古典的で進化の仕様がないと言われていたマッスルバックでさえ昔よりも打ちやすくなっています。
それではそれぞれの構造と特性、それにフィットする人を詳しく解説していきます。
【ポケットキャビティ】
最近のアイアンの主流となる構造です。構造としては、マッスルバックのバックフェースを肉抜きしたキャビティ構造のソール側にポケットをもけることでフェースが薄いエリアを広くし、スイートエリアが広範囲になるという特性があります。
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重心位置は、モデルによって様々ですが、スピンがかかるようにやや重心を高くしているモデルも見られます。それでも、傾向としてはスピンが少ない弾道になりやすく、距離が稼げる反面止まりにくいことや、スピンが安定しにくく”飛びすぎ”というミスが出てしまうデメリットがあります。
ロフトは25°から32°と多用ですが、ボリュームゾーンは28°~29°です。
素材は、ステンレススチールとクロモリが多いですが、一部軟鉄ボディのポケットキャビティも存在します。素材の違いはあっても、基本的に打感はフェースの厚さに起因するので軟鉄であっても、フィーリングは硬めになりやすいです。
特にここ数年のモデルではポケットキャビティをさらに進化させたアイアンも登場しています、例えば、ピンi210やテーラーメイドSiM MAXアイアンなどです。ポケット部分に樹脂を入れて、打感の向上とスイートエリアの維持を狙ってるモデルです。
様々な度数から選びたい人の中で、飛距離を少し伸ばしたい人、左右のミスを減らしたい人におススメの構造です。
【中空】
中空は読んで字のごとく中が空洞になっているヘッドのことを言います。ポケットキャビティと目的は似ていますが、中空はポケットキャビティと違い、空洞部分が完全に閉じています。デザイン的にマッスルバックのようなものが多くかっこいいです。その反面、価格が高いものが多いのも事実。おそらく構造的に製造精度や単純に手間がかかるなどが理由だと思います。
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性能面のメリットはポケットキャビティと同じです。飛ぶ構造のため、そこまでロフトを立てたものは少なく30°前後に多い構造です。最近では、中空の中に樹脂などを充填したモデルも登場しており、これまでどうしても解消できなかった打感の硬さや打音の高さを改善しています。もちろん、充填剤が入ると、さらに高額になることも少なくないので、打感のためだけにそれだけのお金を払う価値があるかは不明です。
何よりもデザインがかっこいいというのは、長く使うアイアンにとって魅力的です。
飛びアイアンで見た目もそれなりにかっこいいものが良いという人におススメです。
【キャビティバック】
キャビティバックは、マッスルバックのバックフェースを全体的に肉抜きしたようなデザインのアイアンです。マッスルバックと並んで古くからある構造。くりぬいた鉄をヘッドサイズの大型化や、低重心化するように配分しているので、モデルによって異なりますが、マッスルバックに比べて左右の安定性が高くなっています。
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ロフトは、30°~34°が多く見られます。構造的にもロフト的にも左右のミスを減らしたい場合にもっともおススメする構造のアイアンです。
難易度はこれを基準にするので、普通としておきます。マッスルバックと比較すればかなり簡単だと思います。特に、重心位置が低くなりスイートエリアが低いため、バンカーやベアグラウンドといった悪いコンディションでもハーフトップで球をあげられます。最近では男子プロでもキャビティを使う人が増えています。ただこれは簡単だからというよりかは、どこまでを技術でカバーし、どこまでを道具に任せるかの線引き次第なので、安易にまねする必要もありません。
あくまで自分が欲しい距離が出せるかに焦点を当ててください。
【ハーフキャビティバック】
キャビティよりも肉抜きが少なく、特にソール側は削らずに残したものをハーフキャビティと言います。現在では一番少ないレアな構造になってしまいました。ミズノプロ319や、際どいですがタイトリストT100がハーフキャビティに分類されると思います。
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キャビティとは違い、ハーフキャビティは全て低重心化が目的でその構造を採用しているように思います。そのため、マッスルバックよりもスピンを減らしたい、飛距離を伸ばしたい人向けのアイアンです。ただ、難易度的には難しいものが多いのであくまでマッスルバックをベースに考えている人が、上記のような希望を満たすために選ぶ構造と言えます。
左右の安定性に関してはマッスルバックと大差ないので、私としてはあまりメリットを感じないものの、良い製品が多いのでもどかしいところ。
ヘッドがやや大きく、マッスルバックよりもやさしくしたい人におススメです。
【マッスルバック】
最も古典的で何の工夫もない鉄の塊です。圧倒的なかっこよさとラフや抵抗の多い場面での抜けの良さがメリットです。
難易度は高いですが、ミスしても大事故になりにくい場合が多いのでスコアを安定させたい人(あくまで安定、向上ではない)向けの構造です。実際に私もマッスルバックを使っていますが、レベルの高い人なら何らデメリットは無いと思います。
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特性としては、他の構造に比べて重心が高く、ダウンブローでヒットしないと芯に当たりにくいです。つまりトップのミスをしやすい訳ですが、とりあえず前には進むので現場でそこまで悪い印象は抱きにくいです。
フェース厚があるため、打感が良い製品が多いですが、タイトリストやテーラーメイドなど、そうでもないメーカーもあるため、あくまでそういう傾向があるという程度です。タイガー仕様のP7TWは、スイートエリアの真裏にタングステンを埋め込んでいたり、最近ではマッスルバックもハイテク化しています。ちなみに、タイガーのアイアンはタイとリスト時代からタングステンが入っているため打感が硬めのものが多いです。
マッスルバックは、空洞部分がありませんので、フェース長とフェースの高さに対する密度が高く、ヘッドが小さいです。ソールが薄いモデルも多いです。さらに分析すると、バウンス角が多めに付けられていることも特徴の一つです。ソールが薄くバウンスが多いので、ラフの抜けが良かったり、フライヤーしにくい(重心が高いのもあります)などのメリットがあります。