アマチュアにおいて、アイアンはスコアの半分近くを占めるクラブです。ですから、私はアイアンをうまく組める人ほどスコアアップが早いと考えています。

アイアンのフローがクラブセッティングの軸となりますので、良いクラブセッティングには合うアイアンを選ぶことがとても重要になります。

・合うアイアンの選び方
・バウンスの重要性
・ライ角とスイングの関係性

そして、合うアイアンに出会うことで、効率的なスコアアップとスキルアップが可能になります。”自分の頭で考えられる”ように情報を伝えていきたいと思います。それでは、始めます。

アイアンの全体像を知る

まずは、アイアンの全体像を把握することから始めます。当たり前ですが、アイアンはヘッド、シャフト、グリップによって成り立っていますが、その中の要素として構造バウンス角ライ角ロフト角素材などなど。

これらの役割をざっと説明していきます。

まずは、ヘッドの中でも最も重要な構造から。現在出ているアイアンはポケットキャビティ、中空、キャビティ、ハーフキャビティ、マッスルバックの5種類に分類することが出来ます。

特性としては、ポケットキャビティと中空がフェースを薄くして弾きを向上させることでスピンを減らし飛距離アップを狙ったアイアンです。キャビティとハーフキャビティはマッスルバックを肉抜きしてその分をソール側に配分したようなアイアンで、球のあがりやすさとスピンのバランスを調整したアイアン。マッスルバックは何の細工もしていない鉄の塊、他の構造と比べると高重心でスピンがかかる反面打ち上げ難いアイアンです。

それぞれの特性の詳細と選び方は後で書きます。

次にバウンス角です。これは、ウェッジでよく耳にするワードですが、アイアンにも存在します。基本的にフェアウェイではバウンスの有無で大きな違いは出ませんが、フェアウェイバンカーやベアグラウンド、深いラフなどでミスの仕方に差が出ます。

ライ角は、シャフトが地面からどれくらい立っているのかを示したものです。スイングやシャフトの長さによって異なりますが、日本市場の標準ライ角は7番で62°前後です。

ロフト角は一番馴染みがある要素ではないかと思います。フェース面が垂直からどれだけ傾いているかを意味しています。寝ていれば重心位置も後ろに来るため曲がりにくくなったり、スピンが増える要因になります。

そして素材です。現代のアイアンは様々な素材のアイアンが販売されています。基本的には鉄で、最近増えてきたのがクロモリ(クロームモリブデン鋼)、一昔前からやさしいアイアンに使われているステンレススチールなどがあります。ステンレススチールのように軽い素材の物はサイズが大きくて結果としてヘッド重量はだいたい同じになります。

それではここから、上記の要素がフィッティングにおいてどんな効果があるのかについて解説していきます。

アイアンにおいて最も重要なこと

アイアンを選ぶときに最も重要なことは求める距離を飛ばせることです。これだけは間違いないようにしましょう。ですから、「飛び系アイアンを使っているようではだめだ」などというなんの根拠もない嘘をついている人の話は無視しておけば良いのです。
そこで注意点なのですが、距離とは何のことかをはっきりさせておきましょう。距離=キャリーだと思ってください。特にアイアンにおいては、”距離=平均キャリー”という意識で読み進めて頂きたいです。

なぜキャリーなのかというと、ランが水物だからです。アマチュアでも、グリーンのコンディションによってはグリーン上でスピンバックすることも有るでしょう。逆に、大抵の場合はランが出ますから、キャリー以外は自分の実力とあまり関係ないということになるのです。

自分がどのくらいの距離のコースでプレーすることが多いのか、もしくはどのくらいの距離のコースでスコアが出るようにしたいのかを今一度考えてください。あくまで参考値ですが、7000y超のコースでスコアを出すのであれば最低でも7番でキャリー160yは欲しいです。楽に70台を出すなら180yあると理想的。

欲しい距離を決め、それに合わせてだいたいのロフト角を決めていくというのがヘッド選びの第一段階です。たとえ同じ30°でもポケキャビの30°とキャビティの30°では距離も飛び方も違うので自分の欠点を補う、もしくは自分が打ちたい球を打てるヘッドを絞っていきます。

この際、片っ端から打っていく必要があることをお忘れなく。打たなければそのアイアンのことを理解することは不可能だと思ってください。ただ、ある程度度数の検討を付けるために分類するなど適宜効率化してください。

ちなみに、アイアンはヘッドの作用が強いので、私のやり方ではシャフトは一番最後に決めます。

アイアンの飛距離に影響を与える構造

構造は、ヘッド重量がどのメーカー、モデルも同じアイアンにおいて、距離を決める重要な要因です。特に最近では様々な構造を目にするようになりましたし、古典的で進化の仕様がないと言われていたマッスルバックでさえ昔よりも打ちやすくなっています。

それではそれぞれの構造と特性、それにフィットする人を詳しく解説していきます。

【ポケットキャビティ】

最近のアイアンの主流となる構造です。構造としては、マッスルバックのバックフェースを肉抜きしたキャビティ構造のソール側にポケットをもけることでフェースが薄いエリアを広くし、スイートエリアが広範囲になるという特性があります。

重心位置は、モデルによって様々ですが、スピンがかかるようにやや重心を高くしているモデルも見られます。それでも、傾向としてはスピンが少ない弾道になりやすく、距離が稼げる反面止まりにくいことや、スピンが安定しにくく”飛びすぎ”というミスが出てしまうデメリットがあります。

ロフトは25°から32°と多用ですが、ボリュームゾーンは28°~29°です。

素材は、ステンレススチールとクロモリが多いですが、一部軟鉄ボディのポケットキャビティも存在します。素材の違いはあっても、基本的に打感はフェースの厚さに起因するので軟鉄であっても、フィーリングは硬めになりやすいです。

特にここ数年のモデルではポケットキャビティをさらに進化させたアイアンも登場しています、例えば、ピンi210やテーラーメイドSiM MAXアイアンなどです。ポケット部分に樹脂を入れて、打感の向上とスイートエリアの維持を狙ってるモデルです。

様々な度数から選びたい人の中で、飛距離を少し伸ばしたい人、左右のミスを減らしたい人におススメの構造です。

【中空】

中空は読んで字のごとく中が空洞になっているヘッドのことを言います。ポケットキャビティと目的は似ていますが、中空はポケットキャビティと違い、空洞部分が完全に閉じています。デザイン的にマッスルバックのようなものが多くかっこいいです。その反面、価格が高いものが多いのも事実。おそらく構造的に製造精度や単純に手間がかかるなどが理由だと思います。

性能面のメリットはポケットキャビティと同じです。飛ぶ構造のため、そこまでロフトを立てたものは少なく30°前後に多い構造です。最近では、中空の中に樹脂などを充填したモデルも登場しており、これまでどうしても解消できなかった打感の硬さや打音の高さを改善しています。もちろん、充填剤が入ると、さらに高額になることも少なくないので、打感のためだけにそれだけのお金を払う価値があるかは不明です。

何よりもデザインがかっこいいというのは、長く使うアイアンにとって魅力的です。

飛びアイアンで見た目もそれなりにかっこいいものが良いという人におススメです。

【キャビティバック】

キャビティバックは、マッスルバックのバックフェースを全体的に肉抜きしたようなデザインのアイアンです。マッスルバックと並んで古くからある構造。くりぬいた鉄をヘッドサイズの大型化や、低重心化するように配分しているので、モデルによって異なりますが、マッスルバックに比べて左右の安定性が高くなっています。

ロフトは、30°~34°が多く見られます。構造的にもロフト的にも左右のミスを減らしたい場合にもっともおススメする構造のアイアンです。

難易度はこれを基準にするので、普通としておきます。マッスルバックと比較すればかなり簡単だと思います。特に、重心位置が低くなりスイートエリアが低いため、バンカーやベアグラウンドといった悪いコンディションでもハーフトップで球をあげられます。最近では男子プロでもキャビティを使う人が増えています。ただこれは簡単だからというよりかは、どこまでを技術でカバーし、どこまでを道具に任せるかの線引き次第なので、安易にまねする必要もありません。

あくまで自分が欲しい距離が出せるかに焦点を当ててください。

【ハーフキャビティバック】

キャビティよりも肉抜きが少なく、特にソール側は削らずに残したものをハーフキャビティと言います。現在では一番少ないレアな構造になってしまいました。ミズノプロ319や、際どいですがタイトリストT100がハーフキャビティに分類されると思います。

キャビティとは違い、ハーフキャビティは全て低重心化が目的でその構造を採用しているように思います。そのため、マッスルバックよりもスピンを減らしたい、飛距離を伸ばしたい人向けのアイアンです。ただ、難易度的には難しいものが多いのであくまでマッスルバックをベースに考えている人が、上記のような希望を満たすために選ぶ構造と言えます。

左右の安定性に関してはマッスルバックと大差ないので、私としてはあまりメリットを感じないものの、良い製品が多いのでもどかしいところ。

ヘッドがやや大きく、マッスルバックよりもやさしくしたい人におススメです。

【マッスルバック】

最も古典的で何の工夫もない鉄の塊です。圧倒的なかっこよさとラフや抵抗の多い場面での抜けの良さがメリットです。

難易度は高いですが、ミスしても大事故になりにくい場合が多いのでスコアを安定させたい人(あくまで安定、向上ではない)向けの構造です。実際に私もマッスルバックを使っていますが、レベルの高い人なら何らデメリットは無いと思います。

特性としては、他の構造に比べて重心が高く、ダウンブローでヒットしないと芯に当たりにくいです。つまりトップのミスをしやすい訳ですが、とりあえず前には進むので現場でそこまで悪い印象は抱きにくいです。

フェース厚があるため、打感が良い製品が多いですが、タイトリストやテーラーメイドなど、そうでもないメーカーもあるため、あくまでそういう傾向があるという程度です。タイガー仕様のP7TWは、スイートエリアの真裏にタングステンを埋め込んでいたり、最近ではマッスルバックもハイテク化しています。ちなみに、タイガーのアイアンはタイとリスト時代からタングステンが入っているため打感が硬めのものが多いです。

マッスルバックは、空洞部分がありませんので、フェース長とフェースの高さに対する密度が高く、ヘッドが小さいです。ソールが薄いモデルも多いです。さらに分析すると、バウンス角が多めに付けられていることも特徴の一つです。ソールが薄くバウンスが多いので、ラフの抜けが良かったり、フライヤーしにくい(重心が高いのもあります)などのメリットがあります。

 

アイアンヘッドの素材

アイアンと一括りにしても様々な素材が使われています。同じ鉄だとしても、S20CとS25Cなど炭素の含有量の違いで打感や比重が異なるため、ヘッドの特性が微妙に変わります。

さらに、最近では純粋な鉄ではなくステンレスやクロモリなどの合金をボディに用いるモデル、様々な素材を溶接して組み合わせた複合素材のモデル、シンプルに見えるがタングステンを埋め込んで重心設計しているモデルなど非常にバリエーションが増えています。今となっては単一パーツ削り出しのモデルはほとんど絶滅しています。

よく「軟鉄は打感が良い」と言われますが、そうとは限りません。打感に影響するのは素材だけでなくフェースの厚さもあるからです。フェースが厚ければステンレススチールでも柔らかい打感になります。ただ、軟鉄を用いているモデルはハイエンドなものが多く、フェースが厚いため結果として打感が良いモデルの割合が多いというだけ。

素材と密接にかかわるのが、製法です。金属製品なので、鋳造と鍛造に分かれます。鋳造は、型に流し込んで成型するため空隙ができやすく密度が鍛造よりも微妙に小さくなりやすいです。鍛造は、英語で言うと「forged」、削り出しという意味です。鉄の塊をプレスしてある程度成型した後、削っていく製法になります。製造精度で言えば、鍛造の方が正確ではありますが、ゴルフクラブくらい小さい物であれば、気にするほどではありません。

打感は、これも小さな違いではありますが、鍛造の方が良いです。ですから、軟鉄鍛造のアイアンの打感が良いというのは当然のことなのです。もちろん、打感は自己満足の世界なので、ここでは重視しませんがこのnoteは”自分の頭で考えられるようにする”ことが目的なので、迷ったときに最後の決め手となるかもしれませんから一応頭の片隅に置いておいてください。

バウンスの重要性

アイアン選びにおいても、バウンスはしっかりと考えて選択する必要があると考えています。なぜかというと、アイアンで打つコンディションはウェッジよりも多様だからです。ある程度のレベルのゴルファーになると、ラフの厄介さに気付くと思います。ラフは実際にクラブを入れてみないと本性が分からず、素振りでは考えもしないようなミスが出てしまうからです。一方で、バンカーは硬さだけが変数でそれ以外はだいたい読めます。硬さも、芝目のように場所によって大きく差が出ることは稀で予測しやすいのです。

そうなってくると、フェアウェイバンカーから打つ可能性や、ベアグラウンドから打つ可能性があるアイアンもウェッジと同様にバウンスに配慮する必要があるわけです。

しかしここで一つ問題があります。それは、メーカーがバウンス角を表記していないことがあるという点です。海外のモデルで表記するのはピンとタイトリスト、一部のキャロウェイ、テーラーメイドです。国産ブランドではVカットソールを売りにしているスリクソン以外はマッスルバックのモデルを除いて、表記していない場合が多いです。

しかも、バウンスを自分で計測するのはかなり難しいので、どうしてもメーカー公表値に頼らざるを得ません。ある程度のバウンス角はフローリングで構えてどれだけフェースが浮くかで検討が付くものの、数字としては分かりません。

さて、本題に入りますと、バウンス角はどのくらいあれば良いのか

これは、ヘッドサイズによると思います。例えば、ピンG425アイアンは7番で8°というかなり大きなバウンス角を付けてあります。アメリカのブランドは、西海岸と東海岸にそれぞれラボがあって、それぞれの芝で良い結果にいなるバウンスを調べているらしいです。相場としては、7番で4°程度のバウンス角が付いている物が多いように思います。

ヘッドが小さいマッスルバックなら5°程度で十分でしょう。G425のような大型ヘッドはもう少しバウンスが合っても良いと考えております。ちなみに、私も今現在実験としてマッスルバックで7番、7°のバウンスのアイアンを使っていますが、何も不満はありません。このことから、バウンスはあればあるだけ良いという結論になりつつあります。

現時点では、ティフトン芝のふわふわの状況でのフライヤーor距離のロスを減らせること、PWでのランニングアプローチがやりやすいこと、フェアウェイバンカーで確実に出せることなど多くのメリットを実感しています。

最近の大型ヘッドなら、バウンスはあるだけ良いです。先に述べた通り、芝の抵抗が多い場面ではヘッドが大きければ大きいだけ不利になります。それを補うためには、ヘッドが通る位置を1㎜でも高くして抵抗を減らすことと、鋭いエッジの”線”で着地するよりもバウンスの広い”面”で着地するという二点が大切です。最低でも5°のバウンスは欲しいですね。

ここからは、ヘッドタイプによらず共通の特徴を説明します。それは、インパクトロフトの安定です。バウンスというのは、その構造上設計ロフトに対してインパクトロフトが立ちやすくなると私は考えています。バウンスで着地をした後にエッジが地面に着くようにストロングロフトになります。その瞬間の小さな”動き”が微量ではありますが、スピンを増やし、打ち上げ角は低くなります。まさにマッスルバックに最適な組み合わせ。マッスルバックでハイバウンスが多いのはこのためなのかもしれません。

逆に言えば、最近のストロングロフトのヘッドはあえてバウンスを削ることで、インパクトロフトを大きくし、その”角度”でスピンを増やすことを狙っているのでしょう。重心が低くてもスピンをかけるための工夫はこの程度の小さいことなのです。

重心設計とロフト

最近のアイアンは、シンプルなキャビティでも番手別重心設計をしているモデルが登場しています。重心位置は、簡単に言うとどこに重さを配置するかです。

つまり、ロフトが寝ていれば重心は後ろに下がります。同じ7番であっても26°の物よりも35°の方が安定した弾道が打てるというのは当たり前の話。もっと言えば、同じセットの中でも5番より9番の方が打ちやすいのはこのためです。長さの影響ももちろんありますが、同じ長さであってもロフトが寝ている方が安定します。

重心設計がされているアイアンにおいてロフト角変更はタブーだと私は考えています。鉄の純度が高いアイアンや鍛造のモデルでは、ロフト角の変更が可能となっています。ロフト変更に対応しているメーカーがありますが、私としてはいかがなものかと思っています。ロフトを変えれば重心が変わるのに、設計ロフトを崩すような加工をメーカーが受けるというのはどうなのかと。

安定した弾道を打ちたいのであれば、ロフトが寝ているモデルを選び、スピン量を制御して飛距離を調整します。もちろん方向性もその際に調整するわけですが、現時点でカーボンシャフトほどスチールは多用では無いので、偏見を持たずにスチール以外の選択肢も模索するべきです。もしくは、ロフトが寝すぎていて飛距離に不安がある場合は、バウンス角を増やすということも手法としてはアリです。例えば、私も使用している三浦技研のアイアンの中でも、MCW対応モデルは±2°のバウンス角の変更が可能です。元のバウンスよりも2°増やしましたが、インパクトロフトで1°程度ストロングになることが分かっていますので、これで飛距離を増減させることも出来ます。

ここまで細かいセッティングを出すフィッターも少ないでしょうから、こっそり思案してみてください。

また、最近多い、タングステンを埋め込んだキャビティバックアイアンに関しては、左右安定性を狙っていると思われるものに限ってロフト角変更をしても良いと考えています。

具体的なモデルとしては、ホンマTR20V、スリクソンZXシリーズアイアンなどです。色が変わっていて、トゥ側にタングステンが埋め込まれているのが分かるようなモデルですね。

これらは、ウェイトの場所的に、ロフト変更をしてもデメリットとなるような重心のずれが起こりにくいです。まぁロフトを変更しないで済むならそれが一番良いです。

ライ角調整の是非

アイアンと言えば、定番のカスタマイズがライ角調整です。ライ角調整を売りにしているメーカーもありますし、それこそがフィッティングと謳うところすらあります。

ライ角調整は±2°の範囲内であればやった方が良いと考えています。ピンは±4°まで調整可能なモデルがありますが、それは正直やり過ぎです。

スイングのライ角と、クラブのライ角がずれているとどんな弊害があるのか。例えば、ライ角がアップライトになっている場合、ヘッドのトゥ側が地面に潜り込んでしまい、センターヒットしてもスライス回転がかかったり、初速が出にくいなどの影響があります。これに合わせてライ角を立てていくことでそのようなミスが少なくなり、安定したショットが打てるというのがライ角調整の謳い文句。

確かにその通りです。間違いなくフィッティングでは良い結果が出ます。これは否定する余地はありません。

しかし、実際に調整して1年など長いスパンで再度計測した時に、スイングのライ角が悪化していたという例が見られたのです。要するに、打つ側としてはライ角調整するまで、クラブがうまくヒットした経験が無かったわけです。それに対して、ライ角調整をしてヒットするようになると、そこで落ち着かず、そのクラブに対して自分の癖であるライ角でヒットするように体が記憶しているということなのだと予測しています。

というのも、ライ角調整をしてそのあとに悪化した人が全員ゴルフ歴が10年以上の人だったからです。特に、レッスンを受けていない人がほとんどなので、これに当てはまる人は、ライ角調整に慎重になった方が良いでしょう。

では、少しのライ角であれば、腕や身長のバランスで前後するので2°以内を目安に調整することをおススメしています。ただし、バイオスイングダイナミクスを取り入れている方に聞いたところ、慎重に対して腕の長さがあまりにも長いor短い人は日本人ではかなり少ないらしく、そうなるとライ角は本来そこまで大きく差が出ないということになります。どちらかというと、柔軟性や可動域の問題と言えます。しかしこれも深く考えると、たくさん練習した人はゴルフスイング軌道内の柔軟性は必要十分に鍛えられます。つまり、正しいスイングになれば、ライ角はそろい、調整する必要などないのです。

細かい話を続けると、アメリカのメーカーはややアップライトなアイアンが多いです。タイトリストが7番で63°が標準に対して、ミズノは61.5°が標準です。

余談ではありますが、マーク金井氏は65°程度のライ角ということをブログで公表しています。金井氏はライ角調整推奨派ですから、私とは意見が完全に一致しているわけではありません。変更している度数は3°なので私的にはちょっとやり過ぎかなと。

もう一つライ角調整を全面的に推奨しない理由があります。それは、ライ角調整による方向性の変化です。

ライ角を調整すれば、重量物であるネックの位置が変わるわけです。当然、重心位置も変わります。それによって、アップライト(=ライ角を立てる)にすると方向は左へ、フラットにすると右へずれ込みます。

あくまで、アイアンは”自分が打ちたい弾道が打てるかどうか”が最重要項目なので、スイングに合ってなかろうが良い球を打てるクラブが正解です。かなりインサイドからクラブヘッドを入れる人でアップライトにライ角を調整すると、ライ角がフィットしていないヘッドよりも引っ掛けのミスが増えるなんてこともフィッティングの現場ではよくあること。

特に、ライ角に対してフラットに当てる人はレイドオフが出来ていてシャローに振っている傾向もあるためダフったりトップするという上下のミスは出にくいです。

まとめると、アンダーライン2°以内であれば、ライ角は調整した方が良いフラットにヒットしている場合は、出球を見て適宜調整という感じです。あまり神経質になり過ぎない方が良いです。あくまで求める弾道が再現できるかに注力してほしいと思います。

シャフトの重要性

アイアンにおけるシャフトの重要性はドライバーほど高くありません。芝にヒットする時に地面の抵抗に負けない程度の剛性があればとりあえず困ることはありません。

ドライバーのように同じ重さでも様々な剛性分布、様々な特性を持ったシャフトがあるわけでは無いのです。もちろん、一昔前に比べればスチールシャフトの設計技術、製造技術は飛躍的に向上しましたが、それでもその違いをはっきりと感じられる人はごく一部。

では何に注目してフィッティングしていけば良いのか。

最も重要なのは重量です。スチールは60g台から130gまで多くの重量帯が存在します。カーボンシャフトだと40g台からありますので、重量の幅がドライバー用よりもはるかに広いのです。適正な重量を調べるのは、ヘッドスピードの変化を見る方法が一番分かりやすいです。

まず、100g程度のシャフトを打っていきます。N.S950くらいのスペックですね。そして、その平均値を記録していきます。球数は5球程度。次に110g程度のシャフト、120g、130gと上げていきます。これでどの重量帯になるとヘッドスピードが落ちるのかを調べていきます。KBSなど厳密に5g単位でフレックスを作っている物で比較するのが理想です。

そして、計測した平均値から限界重量を求めます。これは、ヘッドスピードが落ちない上限ギリギリの重さです。やはり、アイアンショットを安定させることにおいては重量が最も影響力を持ちます。これは、ヘッドの性能と並んで重要です。逆に言うと硬さやキックポイントはそこまで神経質にならなくて良いです。

重量が決まったら、その重量があるシャフトをリストアップしていきます。この際、フレックスも含めて考えてください。もし試打していく中で本当に気に入ったシャフトが無い限りは重量だけで決めてしまっても良いくらいです。あとは振り心地を体験して厳選していきましょう。

アイアンも溝の深さや形状、ミーリング加工がそれぞれ違います。タイガー用のマッスルバックアイアンはわざわざ溝を深くしているというのは有名な話。

ただここで言いたいのはそういったモデルによる違いではありません。距離フローを考えた時にウェッジとどう繋げるかということです。

ウェッジのミーリングや溝はとにかくスピンをかけることを目的に設計されています。しかし、アイアンはその重心位置やロフトによってスピンを適切な量に調整しています。そのため、スピンのかかり具合に差が出るわけです。

最近ではスリクソンZXアイアンで番手別溝設計なるものを見ましたが、ほとんどのアイアンではそのようなことはされません。そうなると、必ず溝やミーリングがスピン重視になっているウェッジとの組み合わせに注意が必要です。

さすがに、アイアンの溝を深くするというのは現実的ではありませんから、ウェッジの度数を調整するのが賢明と言えるでしょう。ウェッジの度数フローは本数に余裕があれば4°刻みで行ってください。もし本数に余裕が無ければ5~6°でも構いません。

ポイントはウェッジの度数フローに対して、アイアンと一番立っているウェッジの度数の差を、ウェッジの度数フローよりも詰めることです。これにより、飛距離フローを整える効果があるのです。ウェッジは溝やミーリングの特性だけでなく、その重量、長さから飛びにくいです。そのため、ウェッジの度数フローのままアイアンにつなげると、PWとの差が大きくなってしまうのです。

もし、アイアンセットのAWやGWがあるのであれば、それとウェッジとの差も詰めます。

番手選択

アイアンの番手選択はロングアイアンをどこまで入れるかがネックになってきます。特に最近のアイアンは4番以上の番手を作っていないことも多いのでハイブリッドを入れる人も増えています。

個人的な見解としては、5番までは最低でも入れて欲しいです。これは、アイアンの技術レベルの向上を狙うためです。もし5番を打てたとして、ハイブリッドの方がよりグリーンを狙えるというのであれば、5番を抜いても良いですが、打ちこなせればアイアンの方が色々都合がよくて使いやすいと思います。

フィッティングの順番と流れ

アイアンセッティングの大まかな流れは以下の通りです。

①ロフトを決める
②構造を決める
③バウンスを決める
④ライ角を決める
⑤シャフトを決める

①と②は距離③と④は芝でのダフリ&トップの防止⑤はスイング自体の安定を狙います。これは効果が高く重要度の高い順になっていますので、間違いないように気を付けてください。

 

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